有酸素運動でBDNFが増えるわけ。~身体を動かすと分泌されるイリシンと脳機能との関係~

BDNF

イリシンとは  ~BDNF(脳由来神経伝達物質)を発原~

有酸素運動など身体を動かすことは、脳に良いことが知られ、近年は認知症予防としても有酸素運動が取り入れられてきました。
しかし、肝心のどのようなメカニズムによって脳の働きがよくなるのかは解明されていませんでした。

2012年、ある研究で有酸素運動を行うことで筋肉細胞から、とあるホルモンが分泌されることが発見されます。
このホルモンは、ゼウスの妻ヘーラーの伝令を務める「イリス」にちなんで「イリシン」と命名されました。
イリシンは、エネルギー代謝に関与する膜タンパク質の分解産物で、発見されて比較的に新しいものです。

血液中に放出されたイリシンは、中性脂肪を蓄積する「白色脂肪細胞」に働きかけ、脂肪を燃焼しエネルギーを産出する「褐色脂肪」のように振る舞い、その結果体重が減少し血糖値の改善が期待できるメカニズムが確認されています。

イリシンは当初、骨格筋と脂肪組織から分泌されることが示されていましたが、次第に骨や脳を含む多くの組織でも分泌していることが確認されています。
脳内で、BDNF(脳由来神経栄養因子)が脳の神経細胞を生成・再生することが知られています。
BDNFは、神経細胞の分化、成長に関係するほか、シナプスを伸長させる働きがあり、認知症、うつ病、双極性障害、摂食障害等といった神経症、精神疾患者においてBDNFの減少が確認されている成分です。
BDNFは有酸素運動で分泌されることが知られていますが、その発原はイリシンの分泌によってBDNFの分泌が促されるということがわかってきました。

イリシンの効果

脳機能強化

イリシンは脳内BDNFの分泌を促し、脳神経細胞の働きを活発にします。
BDNFが分泌されると、
IGF-1(インスリン様成長因子)、FGF-2(繊維芽細胞成長因子)、VEGF(血管内皮成長因子)
などのホルモンが分泌され、血液脳関門を通過して脳内へ入ります。
これら成長因子とBDNFが相互作用し、学習に関するメカニズムを活性化するとしています。

また、イリシンは海馬に存在し、アルツハイマー患者のイリシン、BDNF濃度ともに低下していることがわかっています。
マウス実験で、5週間にわたって毎日水泳させたマウスは、アルツハイマーの発症と関わるβアミロイドを注射しても記憶力の障害がなかったことから、イリシンは認知症治療、予防の新たな手段になる可能性も期待されています。

脂質代謝の改善・体重減少

一般的に言われる肥満とは、白色脂肪の増加です。
白色脂肪に余分なエネルギーが蓄積され、身体の器官を守る働きがありますが、過大となると肥満、心臓疾患、糖尿病へとつながるリスクも高まってきます。
一方褐色脂肪は代謝的熱発生によってエネルギーを消費してくれます。
イリシンの血中濃度増加は、USP1発現を刺激してエネルギー消費を増加し、PPARαを介して白色細胞から褐色脂肪への変換を促進してするため肥満、メタボリックシンドロームの防止に繋がると示唆されています。

イリシンを増やす方法

イリシンは発見されて間もないので、明らかになってくるのはこれからというところです。
有酸素運動だけでなく、筋肉を動かしさえすれば発生するのではないかと期待されています。

運動

有酸素運動

自転車、ウォーキング、ランニング、ダンス、球技、筋力トレなど

糖代謝、エネルギー代謝で重要な役割を果たすPGC-1αは,運動の骨格筋運動によって誘導されてイリシンの分泌を促します。そのため、身体を動かすことがイリシンを分泌し脳のBDNF分泌を促すことにも繋がってきます。
「かつては指を動かすと脳に刺激を与え活性化させる」と言われていましたが、近年は、有酸素運動を含めた全身の筋肉を動かしたほうが脳への刺激が高まると言われるようになってきています。

貧乏ゆすり(ジグリング)

日本では、貧乏ゆすりは行儀が悪いと言われていますが、海外では「ジグリング(貧乏ゆすり様運動)」と呼ばれ、注目を集めています。
ジグリングとは、股間接、膝関節を小刻みに動かす随意運動で、リズム運動と同じような効果が期待できると言われています。
やり方は、椅子に浅めに腰掛け、股関節と膝関節を直角に曲げ、足趾の先を床につけて踵を浮かせて上下させます。毎日30分以上、できるだけ早く上下させます。
セロトニンが分泌されてリラックスを示すα波がでるため、心的鎮静化作用があることで知られていましたが、近年は、全身振動刺激を用いた運動が筋活動を促し、イリシン、BDNFレベルが増加したという報告もでており、脳機能向上にも期待されています。

寒冷曝露(コールドシャワー)

寒冷環境下での長期的に行う作業者は、常温作業での作業に比べ、PGC-1α、イリシン濃度が増加することが確認されたという報告もあります。
毎日体を10℃に2時間保ち4週間実験を行ったところ、褐色脂肪組織の活性が1.4倍に増加、また別の実験では、6週間、17℃の低温室で毎日2時間の寒冷刺激を与えたところ、褐色脂肪組織の活性が1.2倍位~2.1倍も増加し、体脂肪率が5%減少したという研究結果もでています。

BDNFを増やす方法へ

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