はじめに
うつ病は「心の病」といいますが、心と身体は表裏一体のもので、心の面だけでなく脳や身体的にもダメージを伴っている状態です。
うつ病にかかるとストレスホルモン(コルチゾール)が脳に浸透していき神経細胞がどんどん減少。
神経細胞の中には神経伝達物質が入っているため、脳全体に存在する神経伝達物質量も低下して脳の働きが不活発となり、年齢とともに集中・認知・記憶力が低下していく要因にもなります。
かつては、人の脳細胞は、特定の数をもって生まれ、大人になってからは増加しないと信じられてきましたが、1980年代に脳の神経細胞の成長を活性化させる蛋白質が発見・抽出され、研究がすすみ特定条件下のもとで増加あるいは減少することが明らかになってきました。
その蛋白質を脳由来神経栄養因子、あるいは英語でBDNF(Brain Derived Neurotrophic Factor)といいます。
うつ病、アルツハイマー型認知症者は、特に記憶に関わる海馬のBDNFが減少していることから、うつ病、認知症予防改善として注目を集めています。
BDNFを増やす事は、脳の働きを高め、精神面、健康維持などにも繋がってくるため、うつ病や認知症者だけでなく、一般の健康的な人達も様々な恩恵を受けることになります。
本記事では、その増やし方についてあげていき、逆に減らしてしまう要因についてもみていきます。
BDNF(Brain Derived Neurotrophic Factor)の働き
BDNFとは、簡単にいうと神経細胞を生成・成長させる栄養素のようなものです。
脳の記憶中枢の海馬に集中していますが、血液中にも存在しています。
BDNFには、
・新しい神経細胞を生成する。
・神経細胞の樹状突起を成長させて、神経細胞のネットワークを強化
・神経細胞をダメージから保護する。
といった働きがあります。
BDNFが分泌されることで、神経細胞の成長が促され、結果的に新しい組織、脳の回路(ネットワーク)が強化されます。
つまり、脳内のBDNFの量が多いほど神経細胞の生成・成長がより活発になって神経細胞が増加していくため、高い集中力、記憶力を引き出し、老化を鈍らせてくれることになります。
BDNFは、すでにある脳細胞をより健康に保ち、脳の可塑性を高め、神経細胞を増やすことで神経伝達物質も増えていくため、天然の向精神薬としても機能し精神面を高めていく働きがあります。
BDNFが増えることで、「糖代謝」「脂質代謝」「過食」や「肥満」も改善することも示されています。