睡眠障害の解消③ ~睡眠とホメオスタシス~

トラウマケア
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はじめに

睡眠の作用は、「体内時計」「ホメオスタシス機構」によるものがあります。
本記事では「ホメオスタシス機構」についての内容です。

前回の記事

ホメオスタシスとは ~体内の状態を一定に保つ(恒常性)~

ホメオスタシスとは、体の状態を環境が変化しても状態を一定に保つ生命維持活動の働きです。
日中活動を行うと時間に比例して「睡眠物質」という脳内ホルモンがたまっていきます。
睡眠物質が蓄積されていくことで眠気が強くなっていきます。
日中に運動をすると眠気が襲ってくるのも、睡眠物質が増加するためです。
疲れた分だけ、眠らせてストレスを解消して疲労をとったり、細胞を修復させようとするのもホメオスタシスの働きによるものです。

睡眠物質とは ~眠りを促す物質~

睡眠物質とは、「睡眠欲求の高い状態で脳内、体液内に出現し、睡眠を引き起させたり維持させたりする物質」と定義されています。
睡眠物質として、アデノシン、ウリジン、酸化型グルタチオン、プロスタグランジン、サイトカイン、神経ペプチドなど数十種類のものが知られています。
日中活動によって睡眠物質が増えすぎると脳が壊れてしまうので、睡眠物質の生産を止め、さらにこれを分解するために、脳の働きを止めて眠ります。
起きていると増えて、眠ると減るのが睡眠物質です。

睡眠物質の代表で最も眠気と関わりがある「アデノシン」は、細胞の代謝で生み出されるエネルギーのアデノシン三リン酸(ATP)が分解されてできたもので、エネルギーの燃えカスのようなものです。
アデノシンが蓄積されていくと強い覚醒作用のある神経伝達物質「ヒスタミン」の放出が抑えられるために眠くなり、眠っている間にアデノシンがアデノシン三リン酸に変換されて、再度エネルギーとして再利用され疲労がとれていきます。

「ウリジン」は脳の働きを抑える神経を活発にさせる作用のほかに、傷んだ神経の機能回復や新生、不要な情報の消去などにも貢献しています。
また、「酸化型グルタチオン」は脳を目覚めさせる神経系を抑える働きとともに、脳の活動によって生じた活性酸素などの細胞毒を解毒して、脳細胞を守ってくれる働きもあります。

夜よく眠れるようにするには

体内時計を整えていても、夜あまり寝付けない、眠ってもすぐ目が覚めるという原因の一つとして、「アデノシン」の分泌が少ないことが考えられます。
そういった場合は、アデノシンを増やすことが睡眠改善にも期待できます。
その方法として、「運動」「昼寝」があります。

運動

運動をすると、多くのエネルギー(ATP)がつくられるので、そのぶんアデノシンも生成されます。
運動した人と、運動をしなかった人の睡眠中の脳を比較すると、運動した人のほうが深い眠りになることが分かっています。

昼寝をする

体内時計による眠気のピークは1日に2回あります。
2つのピークは
 ・午前2~4時
 ・午後2~4時
です。
午後のピークの頃、眠気で活動量が減少してしまい、睡眠物質量が増えにくくなってきます。
そのタイミングに合わせ、午後3時までの間に20分程度の昼寝をすることで、昼寝をしないときよりも睡眠物質が多くつくられます。
つまり、睡眠物質が多く作られるだけでなく眠気が減り、効率的に活動ができます。
しかし、午後3時以降に仮眠をとると、睡眠物質が減るため夜中に寝つきが悪くなり目が覚めてしまうので注意が必要です。

寝つきを悪くする要因

カフェインをとる ~コーヒー、紅茶、緑茶など~

カフェインは、眠気さましやダイエットなどに効果ですが、夜コーヒーなどを飲むと眠れなくなることでよくしられています。
カフェインを摂ると、なぜ眠れなくなるのか良くわかっていませんでしたが、実はカフェインとアデノシンは分子構造が良く似ており、カフェインがアデノシン受容体に作用しアデノシンの働きをブロックするためだということが分かってきました。
そのため、眠りを深くしていくにはカフェインがアデノシン受容体から取り除かれていく必要があります。
カフェインの影響する時間は長く、人でのカフェインの半減期は5~8時間と言われています。
半減期とは、飲んだ量の活動量が半分になる時間のことです。(例えば、200gのコーヒーを飲んだ場合、100gに含まれるカフェインが覚醒作用として働いている時間)
カフェインの効力が完全になくなるには数日かかることもあり、カフェインを含む飲み物を常時とっていると寝つきが悪く、夜も目が覚めやすくなることになります。
カフェインを摂る場合は、なるべく寝つく時間から8時間を差し引いた時間以降(23時に寝る場合、15時以降は摂らない)は摂らないようにする習慣づけを行うと睡眠も改善されることが期待できます。
ただし、HSP(ハイリーセンシティブパーソン)体質の人は、もっとはやめか、朝だけという風にしたほうがいいかもしれません。

カフェインは、コーヒーだけでなく緑茶、紅茶、ココア、栄養ドリンク、チョコレートなどに含まれています。
夜飲む場合は、カフェインの含まれていないものを飲むといいでしょう。

アルコールを飲む

アルコールはアデノシン濃度を上昇させる作用があり、そのためお酒を飲むと眠気が襲ってきます。
しかし、睡眠の質は悪いため、数時間以内に目を覚まし、その後、眠れなくなるという事態に陥ります。
お酒を毎晩寝る前に飲むと、不眠症やアルコール中毒になっていく恐れもあるので、注意が必要です。

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