摂食障害と関係?摂食に関わる体内・脳内物質② ~インスリン・GLP-1~

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Anatomy drawing showing the pancreas, duodenum, and gallbladder. Digital illustration

はじめに

摂食に関わる体内物質について、今回は「インスリン」「GLP-1」について取り上げます。

前回の記事

インスリン ~食欲抑制作用があるも、ダイエットでは大敵~

炭水化物(糖質)を摂ると、消化液によってぶどう糖(グルコース)に分解されて、血液中に取り込まれて血糖値が上昇します。血糖値が上昇しすぎないように抑制する作用をするのが膵臓から分泌される「インスリン」です。
インスリンそのものも食欲抑制作用がありますが、近年は視床下部の摂食中枢に直接作用し食欲抑制として働くことも明らかになってきました。
ただし、血糖値が急激に増加すると、インスリンが過剰分泌されて、結果「低血糖」を招き食欲が増進してしまう面もあります。
また、インスリン分泌が起ると、ぶどう糖はグルコースや中性脂肪に変換されて体内に蓄積されていきます。
そのため、ダイエットでは、インスリンの過剰分泌が起らないように、血糖値の急激な上昇を避ける食事の摂り方が重要とされています。(低インスリンダイエット、スローカロリー)

GLP-1  ~インスリンの分泌を促す作用~

GLP-1(glucagon-like peptide-1)とはグルカゴン様ペプチド-1の略で、人体で分泌されている物質です。
炭水化物(糖質)を摂ると血糖値が上昇しますが、血糖値が上昇しすぎないよう抑性するのがインスリンでした。
そのインスリンの分泌を促す作用をするのがGLP-1です。
GLP-1には血糖値上昇に対してインスリンを分泌して血糖値を下げるだけでなく、脳内の視床下部に働きかけて、摂食抑制する作用も報告されています。

インスリン分泌を促すGLP-1は、小腸下部のL細胞という細胞から分泌され、食べ物(グルコース)が小腸に到達すると感知してインスリンに血糖値が上昇しすぎないように膵臓やその他の臓器に伝える役割を果たしています。
その働きから、腸管での「グルコースセンサー」とも呼ばれています。
また、小腸には、同じように血糖値を調整しているGIPというホルモンも存在しており、インスリン分泌調整に関わる消化管ホルモンを総称して「インクレチン」といいます。
インクレチンは、血糖値が高くなったときのみインスリン分泌を促し、逆に低血糖になると下がりすぎないよう調整する作用があるのが特徴です。

GLP-1の特徴
 腸管から分泌されるインクレチンの仲間
 ・インスリン分泌促し血糖値上昇抑える(ただし中性脂肪を生み出す)
 ・視床下部に働きかけ食欲抑制

GLP-1の分泌を促す方法  ~GLP-1を分泌し食欲を抑制する方法~

GLP-1を増やすと食欲を我慢できる作用があり、食事制限したい場合は分泌を促したいところです。
そのような効果的な方法について調べてみました。

GLP-1受容体作動薬を用いる(GLP-1ダイエット)

GLP-1の分泌を促す作動薬(GLP-1受容体作動薬)は糖尿病用として利用されてきましたが、投与したところ体重が減少している傾向がみられ、さらに、研究の結果、食事量を減らす働きがあることがわかってきました。
そこで、近年ではGLP-1を注射で投与する「GLP-1ダイエット」といったダイエット方法も登場しています。
GLP-1は低血糖になる危険性が非常に低く、満腹感を感じやすくなるので食事量を抑えてくれるため、その結果体重が減少するといった効果がありますが、反面、胃の運動抑性作用が強く出過ぎて吐き気、頭痛、倦怠感などの副作用が現れるため、使用の際は医師と相談する必要があります。

ただし、インスリンが分泌されると、糖が中性脂肪に変換されて体内に蓄積されてしまいます。
インスリン分泌が増えるほど脂肪も増えてくるので、インスリン分泌を増やすだけではダイエット効果はありません。
むしろ、GLP-1は胃や脳に働きかけて食欲を抑制する効果があるので、食事量を減らすことが目的ということです。
普段から間食や過食を繰り返している、過食をやめたいという場合には有効ともいえますが、過食をせず食事制限できている人にとってはあまり有効ではないのかもしれません。

しかしGLP-1ダイエットをやめてから1~2カ月くらい経つと、徐々に食欲が増えてきて、以前と同じようにドカ食いしてリバウンドも起こるようなので、注意が必要です。
(その場合はグレリン抑性が有効?)

GLP-1ダイエットの特徴
・GKP-1投入でインスリン分泌増やす。(ただし中性脂肪になる)
・低血糖になるリスクは低い
・脳や胃に働きかけて摂食抑性(過食を防ぐ)

※過食を抑えたい人には向いているが、食事制限できている人には期待薄い。
リバウンドもあるので注意が必要。

腸活 ~腸内環境を整える~

基本的にGLP-1の分泌を促す土台となるのは、腸の活動を活発にすることが第一です。
腸内が悪玉菌で満たされていると、腸が上手く機能しません。
腸内環境を整えるには、乳酸菌、ビフィズス菌といった善玉菌を増やすことです。
そのためには、善玉菌(腸まで届く善玉菌)と善玉菌の餌となる食物繊維を摂る「シンバイオティクス」で腸活を行うことが大切です。


食事方法 ~食物繊維、オメガ3系脂肪酸を優先的に~

基本的にはどんな食べ物でも分泌がはじまりますが、より効果が期待できるのは魚類の脂に多く含まれるEPA,DHAといったオメガ3系脂肪酸と野菜に多く含まれる「食物繊維」だと言われています。
炭水化物(糖質)制限されている方は、インスリンの急激な上昇を抑えるために「ベジ・ファースト」が効果的とされています。
野菜(食物繊維)⇒炭水化物(糖質)
さらに、最近の研究では、ベジ・ファーストだけではなく、魚・肉料理を食べてからご飯を食べた方がGLP-1の分泌が促進され、食後の高血糖を防ぐことも分かってきました。
つまり、
野菜(食物繊維)⇒魚・肉⇒炭水化物(糖質)
といった順番です。
しかし、肉料理は魚料理に比べて脂肪蓄積作用のあるGIPの分泌も増加するため、長期的には肥満の原因になりうることも示唆されています。
そのため、GIPを分泌し過食を防ぎたい場合は、魚を多めに摂る食事を摂るとよいでしょう。
迷った時は、「和食」が手軽なメニューです。

血糖値上昇を抑え、GLP-1を増やし過食を防ぐ食事法
 野菜(食物繊維)⇒魚(EPA,DHA)・肉⇒炭水化物(糖質)

アルロース(プシコース) ~副作用もなくGLP-1を促進する希少糖~

GLP-1受容体作動薬は皮下注射(侵襲的投与経路)が必要で,さらに,悪心,吐き気,心拍数の増加といった副作用(脳への直接作用が関与)も報告されており、ハードルが高い面があります。
一方、GLP-1分泌を副作用もなく、促すものもあります。
それは希少糖「アルロース(プシコース)という甘味料です。

自然界に存在する糖の99.9%はぶどう糖で構成されているものですが、残りの0.01%が希少糖で、約50種類存在していると言われており、よく耳にするキシリトール、エリスリトールもその仲間です。
アルロースも希少価値の高い存在ですが、近年は果糖(フルクトース)から効率的につくることができるようになり商品も開発されてきているようです。
アルロースは、GLP-1分泌を促して摂食抑制があるのが大きな特徴ですが、砂糖の7割程度の甘味でカロリーゼロといった他「食後の血糖値上昇を緩やかにする」、「内臓脂肪の蓄積を抑える」、「動脈硬化になりにくい」といった研究結果も報告されています。
副作用もなく、GLP-1受容体作動薬より優位性をもっており、砂糖の代わりに利用すると有効です。
しかし、高温熱処理では有効効果が得られなくなるので、生かシロップとして摂るといいでしょう。

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