脂質①脂質の分類

栄養基礎

脂質とは

タンパク質、炭水化物(糖質)に並ぶ生命に大切な三大栄養素の一つ脂質。
生体成分のうち水に溶けない物質で体内で、水分の次に多く含まれています。
脂質は、炭素(C),酸素(O),水素(H)がいくつも繋がり紐状の分子構造をした有機化合物が多いのが特徴で様々な種類があります。
脂質のうちでも多いのは、エネルギー(主に蓄積エネルギー)として利用される中性脂肪(グリセリド、アシルグリセロール)です。
小腸で消化されたあと脂質の種類ごとに複雑な過程で取り込まれ、エネルギー源や、細胞膜、核膜を構成要素となったり、様々な役割を果たしてくれます。
余った脂質は、中性脂肪として体内に蓄積されますが、摂りすぎると肥満となり、生活習慣病の原因となります。
その他、脂質には、細胞膜形成に役割を果たすリン脂質、血液中の中性脂肪やコレステロールを低下させる植物性油脂のω―6系、ωー3系脂肪酸などもあります。
よくサプリで耳にするEPA,DHAも脂質の一種です。

このように脂質には肉のような固体のものから植物油のように液体のものまで存在しますが、今回は、脂質の構造上の大きな分類からみていきます。

脂質の働き

脂質の大まかな働きは下記のとおりです。

・燃料のような存在で、少量の脂質で多くのエネルギー(1gで9kcal)を得ることができます。
・使い切れなかった脂質は中性脂肪に変えられ、蓄えられ必要に応じてエネルギーに変えられます。 
・エネルギーとしてだけでなく、細胞膜、脳神経細胞組織、ホルモンをつくる材料になります。
・体内の水分蒸発を防ぎ、肌を保護します。
・脂溶性の吸収効率を高める。
 脂溶性物質(ビタミンA,D,E,Kなど)は脂質と一緒に摂る事で吸収率が高まります。
・炎症を発症および抑制する作用があります。(脂肪酸)

過剰になると・・

・脂質を摂りすぎると中性脂肪が内臓脂肪となり肥満、生活習慣病を招きます。
総摂取カロリーの30%以上が脂質による食生活は、糖尿病、脂質異常症、動脈硬化を招きやすくなります。
特に飽和脂肪酸の影響が大きく、飽和脂肪酸摂取量に留意する必要があります。

不足すると・・・

・疲労しやすくなったり、免疫力の低下、発育の防ぎ、活動する力が弱まります。
・血管、細胞膜が弱くなり脳出血の可能性が高まります。
・体内合成できない必須脂肪酸(ω3脂肪酸、ω6脂肪酸)が欠乏すると皮膚炎を発症します。
・脳も脂質(コレステロール)でできており、うつ病者はコレステロールが低いことも報告されています。

脂質の分類(その1) ~飽和脂肪酸と不飽和脂肪酸での分類~


脂質を分類すると、常温で固まるものと固まらないものがあり、大きく固まりやすさで分類されます。
固まるものは肉類(動物性)に、固まらないものは魚や植物(植物性)に多く含まれます。
固形類は飽和脂肪酸、液体状のものは不飽和脂肪酸というものが多く含まれているといった特徴があり、これらが脂質の特性を決定づけています。

脂質は食品類には油脂、脂肪の多い肉、乳製品、ナッツ等に多く含まれ、肉類マーガリンやバターといった固形類は飽和脂肪酸、えごま油、あまに油といった液体状のものは不飽和脂肪酸が多く含まれていることが下記表から分かるかと思います。
飽和脂肪酸、不飽和脂肪酸にも、さらに様々な種類のものが存在しますが、飽和脂肪酸の中に太りやすくする特徴の脂肪酸が多いため、肉類といった動物性の油は太りやすくなるのです。

  食品名 可食部100g当たりの成分量
脂質(g) 飽和脂肪酸(g) 多価不飽和脂肪酸
n-3系脂肪酸(g) n-6系脂肪酸(g)
肉類 牛肉リブロース脂身 51.8 18.15 0.07 1.47
牛肉もも赤肉 17.5 5.73 0.02 0.62
ぶたベーコン 39.1 14.81 0.29 3.29
ぶたヒレ赤肉 3.7 1.29 0.03 0.43
鶏皮つき 14.2 4.37 0.09 1.76
鶏ささみ 0.8 0.17 0.02 0.11
油脂類 オリーブ油 100.0 13.29 0.60 6.64
えごま油 100.0 7.64 58.31 12.29
あまに油 100.0 8.09 56.63 14.50
ごま油 100.0 15.04 0.31 40.88
ラード 100.0 39.29 0.46 9.35
マーガリン 83.1 23.04 1.17 11.81
有塩バター 81.0 50.45 0.28 1.86
乳製品 コーヒーホワイトナー植物性脂肪 38.3 32.79 0 0
チェダーチーズ 33.8 20.52 0.26 0.54
プロセスチーズ 26.0 16.00 0.17 0.39
豆類 油揚げ 34.4 3.89 2.26 11.30
黄粉 25.7 3.59 2.02 12.05
ナッツ等 くるみ 68.8 6.87 8.96 41.32
ごま 54.2 7.58 0.19 22.44
アーモンド 51.8 3.95 0.01 12.11
らっかせい 47.5 10.02 0.09 15.57
菓子類 ポテトチップス 35.2 (3.86) (2.40) (12.01)
ミルクチョコ 34.1 19.88 0.09 0.99
チーズケーキ 28.0 (16.93) (0.16) (0.75)
           

脂質の分類(その2)  ~構造での分類~

脂質は化学構造の違いによっても「単純脂質」、「複合脂質」、「誘導脂質」の3種類に分類されます。
単純脂質はグリセリド(中性脂肪)、複合脂質はリン脂質、リポたんぱく質、誘導脂質は脂肪酸、ステロイド(コレステロール)などが属しています。

単純脂質(中性脂肪)・・・体内のエネルギー源

アルコールと脂肪酸のエステル結合してできている脂質を単純脂質といいます。
生物に多くみられる単純脂質は、グリセロール(グリセリン)に脂肪酸が付随した構造になっています。
一つのグリセロールには1~3個の脂肪酸が付随することができ、それぞれ付随した数によりモノグリセライド、ジグリセリド、トリグリセリドと呼びます。
血液中の中性脂肪を構成しているほとんどはトリグリセリドになります。
そのため、中性脂肪を指す場合、広義と狭義の2通りがあり、広義ではモノグリセライド、ジグリセリド、トリグリセリドあわせた総称のグリセリドを指します。
一方、狭義ではトリグリセリドそのものを中性脂肪を指します。

中性脂肪は脂質の基本構造で、非常に疎水性(水になじみにくい)が高い物質で中性脂肪として体内に蓄積されエネルギーの貯蔵、組織の保護などに利用されますが、高値になると動脈硬化・膵臓炎を、肝臓に過剰に付着すると脂肪肝になることでよく知られています。
必要に応じて分解されると、解糖やクエン酸回路を経てエネルギー源として利用されます。

複合脂質(リン脂質、糖脂質)・・・・細胞膜に重要な役割

複合脂質は、グリセロールの脂肪酸にリン脂質、糖脂質などが置き換わったもので、リン、糖を含んだ化合物になります。
代表的な複合脂質の1つであるリン脂質は、水になじむ性質(親水性)となじまない性質(疎水性)のどちらも持ち合わせた両親媒性をもつのが特徴で、生体膜に最も多く含まれている脂質として非常に重要な役割を担っています。
なかでも、ホスフォチジルコリン(レシチン)は、細胞膜リン脂質の30-50%を占め、グリセロリン脂質で最多で、大豆、卵黄に多く含まれる栄養素として知られています。


誘導脂質・・・単純脂質と複合脂質の加水分解後の生成物

誘導脂質“は、単純脂質や複合脂質が加水分解されることで生じたもので、脂肪酸、コレステロール、そしてステロイドなどがこれに当たります。
組織の構成、エネルギー源としての利用の他、ホルモンをはじめとする生理活性物質としての働きも持ちます。

コレステロールはステロイドのステロールと呼ばれるサブグループに属する有機化合物の一種で、悪いイメージがありますが、細胞膜やホルモン、胆汁酸の生成に必要不可欠な物質です。
7~8割は肝臓で合成されますが、残りは食事から合成されます。
食事からのコレステロールが少ないと肝臓で生成するコレステロールが増加し、逆に摂取量が多いと肝臓で生成するコレステロール量が減少します。
そのため、食事から摂取されたコレステロールの量がそのまま血液中のコレステロール値に反映されるわけではありません。

まとめ

脂質の分子構造は分子が紐状になった脂肪酸をもつのが特徴で、この脂肪酸が動物性(飽和脂肪酸)、植物性(植物性)の分類や太りやすさや働き方にも関わってきます。
次は脂肪酸についてみていきます。

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