必須アミノ酸と非必須アミノ酸

栄養基礎

必須アミノ酸と非必須アミノ酸

タンパク質を構成する20種類のアミノ酸のうち、9種類のアミノ酸は体内で合成することができないため、これらを必須アミノ酸と呼び、食物から摂取する必要があります。
また、子供のうちは成長期にアルギニンの合成能力が不足するため、アルギニンは準必須アミノ酸と呼ばれます。
必須アミノ酸以外の体内で合成されることが可能で摂取しておきたいアミノ酸を非必須アミノ酸といいます。

必須アミノ酸(9種類)

体内では合成されず、必ず食物から補給しなければならない

アルギニン(準必須アミノ酸 小児では必須)
メチオニン
ヒスチジン(神経伝達物質ヒスタミンに)
ロイシン(BCAA)
イソロイシン (BCAA)
フェニルアラニン(ドーパミン、ノルアドレナリン)
リシン(リジン)
トリプトファン(セロトニン、メラトニンに)
バリン(BCAA)
スレオニン(トレオニン)

非必須アミノ酸(11種類)

体内で合成できるが、様々な働きがあるため、摂取したいアミノ酸

アルギニン(大人では非必須アミノ酸)
グリシン
アラニン
セリン
チロシン(ドーパミン、ノルアドレナリンに)
システイン
アスパラギン
アスパラギン酸
グルタミン(グルタミン酸に)
グルタミン酸(GABA,グルタミンに)
プロリン

必須アミノ酸

アルギニン(Arg) 準必須アミノ酸(子供にとっては必須アミノ酸)

アルギニンは、1886年にルピナスというマメ科の植物の芽から発見されたアミノ酸です。
成長ホルモンの分泌を促進し、筋肉組織を強くしたり、免疫力を高め、さらにアンモニアを解毒する効果があります。
アルギニンは体内で合成できますが、生成能力が十分でなく、不足分を摂取する必要があるため、準必須アミノ酸ともよばれます。子供にとっては合成能力が不足しがちなため必須アミノ酸となります。

働き
・体内で血管を拡張、血流をスムーズにする一酸化窒素をつくり、体循環や腎循環、血圧の調整
・免疫力を高める効果
・成長ホルモン、インスリン、グルカゴンの分泌に関与
・アンモニアの解毒効果
・スキンケア効果

アルギニンを多く含む食べ物
えび、豚ロース赤身、鶏肉、大豆、高野豆腐、ごま、ナッツ類、牛乳、豆乳など

メチオニン(Met) 必須アミノ酸

メチオニンは、身体の中でタンパク質を作り出すときに一番初めに必要となる必須アミノ酸です。
そのため、不足してしまうとすべてのタンパク質の合成に支障がでてしまいます。
かといって逆に、メチオニンを過剰に摂取してしまうと、血中コレステロールの増加による動脈硬化の発症リスクを高める危険性があるといわれています。

働き
・肝機能を高める
・アレルギー症状を緩和する効果
・うつ症状を改善する効果
セロトニンやノルアドレナリン、ドーパミンなど、うつ病を改善させる作用を持つ脳内物質の材料となります。
・老化防止の効果
・ヘアケア効果
・デトックス効果、薬物中毒の解毒
メチオニンは、ミネラルのセレン(Se)と一緒に働くことで、水銀や鉛、カドミウムなどの有害重金属を体外へ排泄してくれます。さらには、脳神経細胞や中枢神経に有害重金属が蓄積することを防ぐ働きも持っているため、デトックス効果に期待が寄せられています。

メチオニンを多く含む食べ物
クロマグロ、カツオ、鶏肉、豚ロース赤身、牛肉、牛乳、チーズ、豆乳、豆腐、納豆、ナッツ類、全粒小麦

ヒスチジン(His) 必須アミノ酸   ~神経伝達物質ヒスタミンの原料~

ヒスチジンは子供のときは合成できず、大人になってから体内で合成できる唯一の必須アミノ酸です。
体内で成長に関する他、神経機能補助の役割などに関わっています。
脳内では神経伝達物質ヒスタミンの原料となります。
体内のヒスタミン濃度が過剰になると、食中毒(じんましんなど)を引き起すヒスタミン中毒としてよく知られています。

働き
・成長を促進する効果
・慢性関節炎を緩和する効果
・ダイエット効果
食欲を抑制して脂肪燃焼を促進
・脳神経を保護する効果

ヒスチジンを多く含む食べ物
カツオ、マグロ、カジキなどの赤身魚に多く含まれています。
カツオ、マグロ、いわし、牛肉、鶏肉、ハム、チェダーチーズ、ドライミルクなど
ただし、管理状態が悪いとヒスタミンが発生しヒスタミン中毒を引き起す可能性もあるので注意が必要です。

ロイシン(Leu)  必須アミノ酸  ~筋肉もりもりBCAAの一つ~

バリンやイソロイシンとともに、筋肉でのエネルギー源となる BCAA (分岐鎖アミノ酸)に分類され、肝臓の機能を高めて、筋肉をつくり出したり、傷ついた筋肉を修復する働きを持ちます。

働き
・筋肉を強化する効果
体に筋肉を強化して、筋肉を失わせないようにする性質があります。
・肝機能を高める効果
ロイシンを摂取することで、肝機能の向上と身体の疲労回復が期待できます。
・ストレスを緩和する効果
ロイシンにはエンドルフィンと類似した効果があります。
・育毛効果

ロイシンを多く含む食べ物
動物性たんぱく質に多く含まれており、
カツオ、アジやサケ、鶏肉、鶏卵、乳製品、大豆製品
に多く含まれています。
様々な食品から摂取できるため、通常の食事をしていれば不足することはほとんどありません。

イソロイシン(Ile) 必須アミノ酸 ~筋肉もりもりBCAAの一つ~

イソロイシンは、バリン、ロイシンとともにBCAAと呼ばれ筋肉を強化したり、疲労を回復させる効果があります。ヘモグロビンを形成するのに必要で、運動時のエネルギー補給としてスポーツサプリメントなどに配合されています。

・疲労回復効果
脳内にセロトニンが増えると、疲労を感じるようになります。イソロイシンが高まると、セロトニンの生成が抑制されるため疲労を感じにくくなります。
・成長を促進する効果
甲状腺ホルモンの分泌を促し、筋肉や体の成長を促進する効果があります。
・神経機能を正常に保つ効果
脳から出された指令を素早く末端組織に伝達し、判断力や反射速度を上げる作用があります。
興奮系神経伝達物質の材料となるため集中力を高める効果があります。
・糖尿病を予防する効果
・肝機能を高める効果
・髪や肌の健康を保つ効果

イソロイシンを多く含む食べ物
マグロ、サケ、豚肉、鶏肉、鶏卵、牛乳、プロセスチーズなど

フェニルアラニン(Phe) 必須アミノ酸  ~ドーパミン、ノルアドレナリン原料~

フェニルアラニンは肝臓でチロシンに変換され、黒色色素メラニン、ノルアドレナリンやドーパミンなどの興奮性の神経伝達物質をつくり出します。精神を高揚させ、血圧を上げる作用や、記憶力を高める効果などを持っています。
抗うつ、意欲を高め、感情を高めていきたいときに。

働き
・脳機能を高め精神状態を高揚
ドーパミン、ノルアドレナリンの材料となり、気分の落ち込みや無気力を緩和し、精神を高揚させる効果があります。
・鎮痛作用
痛みを抑える効果があり、人工的に合成されたDL-フェニルアラニンは、鎮静剤として医療現場で利用されています。
・皮膚疾患への効果
・血圧を高める

フェニルアラニンを多く含む食べ物
フェニルアラニンは肉や魚、乳製品などに多く含まれ、一般的には安全な物質とされ、摂り過ぎても問題ないと考えられており、過剰摂取の危険度は低いとされています。
肉類(牛レバー、鶏肉)、魚介類(マグロ)、豆類(大豆、高野豆腐、白花豆)、卵、乳製品(チーズ、脱脂粉乳)、小麦、アーモンド、落花生、ごま、かぼちゃ、じゃがいも

リジン(Lys)  必須アミノ酸 ~栄養バランス・身体の修復に~

リジンは肉などの動物性たんぱく質に多く含まれており、小麦や米など穀類には少ないアミノ酸です。
脂肪をエネルギーに変換するのに必要なカルニチンという物質の材料になります。
抗体やホルモン、酵素などをつくる機能を担っており、体の組織の修復や成長に関与しています。
リジンが欠乏すると、疲れやすくなって集中力が低下したり、目の充血、めまいや吐き気、貧血などの症状が現れることがあります。また、肝臓の機能が低下して、血中の飽和脂肪やコレステロールが増加しやすくなります。一般に、高齢の男性は若い人と比較して、より多くのリジンが必要とされます。

働き
・身体組織修復と成長
・肝機能を高める効果
・脳卒中予防
・髪の健康をたもつ(抜け毛予防)

リジンを多く含む食べ物
肉類(鶏肉)、魚介類(カツオ、アジ、)、豆類(大豆、豆腐、高野豆腐)、乳製品(牛乳、チーズ)
植物性たんぱく質中には含量が少ないため、米や小麦、とうもろこしなどの穀類たんぱく質では特に不足しています。

トリプトファン(Trp)  必須アミノ酸 ~セロトニンをつくる原料~

トリプトファンは牛乳から発見され、精神を安定させ、鎮痛作用を持つ神経伝達物質セロトニンの原料となります。
トリプトファンは、体内でナイアシンを生成、脳に運ばれるとビタミンB群(葉酸、ビタミンB6、ナイアシン)、鉄分、とともにセロトニンを生成します。
セロトニンはトリプトファンを摂取しないと生成されないため、不足するとうつ的症状に。
トリプトファンからセロトニンをつくるには、葉酸、ビタミンB6、ナイアシン、鉄分も必要なのでこちらも一緒にとっておきたいところです。
セロトニンが過剰になるとセロトニン症候群(吐き気、めまいなど)を引き起すため注意が必要です。

・精神安定、睡眠改善
神経伝達物質セロトニン、メラトニンの材料
・鎮痛効果、PMS痛み改善
セロトニンは痛みを緩和する作用があります。
・コレステロール値や血圧を調整する

トリプトファンを多く含む食べ物
乳製品や大豆製品、ナッツ類などの様々な食品中のたんぱく質に含まれています。
肉類(牛・豚・鶏のレバー)、魚介類(カツオ、マグロ)、卵、豆類(大豆、豆腐、高野豆腐)、乳製品(牛乳、チーズ)、小麦胚芽、バナナ、アーモンドなど
トウモロコシに少ないため、トウモロコシを主食としていた地域ではナイアシン欠乏症(ペラグラ)が発生していたようです。

バリン(Val)   必須アミノ酸 ~筋肉もりもりBCAAの一つ~

ロイシン、イソロイシンとともにBCAA類で筋肉をつくるのに大切な必須アミノ酸です。
成長を促し疲労回復効果があるため、エネルギー補給としてスポーツサプリメントなどに配合されています。
不足すると食欲を低下させ、栄養不良の悪循環を引き起すと考えられています。

働き
・筋肉を修復する
・肝硬変を改善
バリンを含むBCAAは肝硬変患者の症状を改善する効果があります。
・美肌効果
肌のハリを保つコラーゲン同士を結び付け、肌を内側から支えるエラスチンを構成することで、肌のハリや弾力を保つ効果があります。

バリンを多く含む食べ物
魚介類(まぐろ)、肉類(レバー、子牛肉)、乳製品(プロセスチーズ、脱脂粉乳)、豆類(大豆、豆腐)、落花生
バリンは、多くの食品に豊富に含まれているため、通常不足することはありません。
しかし、BCAAはバリン、ロイシン、イソロイシンの3種類のバランスが保たれることで本来の効果を発揮するため、どれかひとつでも摂取が多くなると、体重の減少やブドウ糖の代謝、アンモニア排出の阻害を招く恐れがあります。

スレオニン(Thr)  必須アミノ酸  ~脂肪肝予防に~

スレオニン(トレオニン)は歴史上最後に発見されたアミノ酸で、体内で合成することができない必須アミノ酸に分類されています。
成長を促進したり、肝臓に脂肪が蓄積するのを抑制、コラーゲンを合成する際の材料として使用されるため、肌のハリを保つ効果があります。
糖原性と呼ばれる性質を持ち、体内でグルコースを生成する際の材料にもなります。

働き
・脂肪肝の予防
肝臓に中性脂肪が蓄積し脂肪肝を引き起こすことを予防します。
・成長を促進する
新陳代謝を促し新しい細胞をつくり出すことで、成長を促進する効果があります。
・胃炎を改善する
胃酸の分泌のバランスを調整する働きがあり、胃炎を予防します。
・美肌効果
・髪の潤いを保つ

スレオニンを多く含む食べ物
魚類(マグロ)、肉類(鶏肉、豚肉、七面鳥)、豆類(豆腐、高野豆腐)、さつまいも、栗、乳製品(プロセスチーズ、脱脂粉乳)、ゼラチン
スレオニンは日常の食事では、基本的に過剰になる心配はないといわれています。
不足すると、食欲不振、貧血、体重の減少などを引き起こします。

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