はじめに
前の記事 「低炭水化物(ローカーボー)ダイエットについて」
中性脂肪の原因となりやすい炭水化物(糖質)を抑える食事法は、ストレスを感じることのないダイエット法として人気です。
先に紹介した「低炭水化物(ローカーボー)ダイエット」は、炭水化物(糖質)を制限するシンプルなダイエット法でした。
次に、類似した発展系ともいえる「低インスリンダイエット」についてみていきましょう。
インスリンの働きについて
カロリーはエネルギー単位の一つで、摂りすぎは太る原因の指標の一つと考えられてきました。
しかし、エネルギーとして消費されずに余ったカロリーがそのまま脂肪になるということではありません。
脂肪として蓄積されるのは、体内でエネルギーが余っていると判断されたときです。
その判断を行っているのがインスリンです。
インスリンは炭水化物(糖質)を摂取し、分解されてできたぶどう糖が血液中に入って糖の量(血糖値)が上昇したときに膵臓から分泌されるホルモンです。
インスリンが分泌されることで、血液中の糖は肝臓や筋肉に送られて血糖値が下がり血糖値の上昇が過剰にならないようコントロールされます、
肝臓や筋肉に送られたぶどう糖は、グリコーゲンとなり体内にエネルギーがなくなった時の貯蔵燃料として蓄積されますが、それでも蓄えられない場合に脂肪として体内に蓄積されていきます。
甘いものや炭水化物(糖質)を食べると血糖値が急激にあがってしまうので、インスリンが過剰に分泌されて、その大きな反作用によって反対に一気に血糖値が下がりすぎてしまいます。
そうなると、今度は脳の栄養素となるブドウ糖が低下してしまうため、脳を守ろうと空腹感を感じて食欲が増していき食べ過ぎてしまいます。
また、摂食障害など抱えた方は同時に血糖値をあげるためにアドレナリンなどの「攻撃ホルモン」が分泌され、いわゆる「キレる」状態になってしまうので、発作的に過食を起こしてしまいます。
この悪循環が体を太らせていく原因になっていきます。
以上より、脂肪を増やさないためには、糖質による急激な血糖値上昇を回避し、インスリンが過剰に分泌されないように配慮することが重要ということになります。
低インスリンダイエットとは
糖質の摂取量でコントロールするのが低炭水化物(ローカーボー)ダイエットですが、インスリン分泌を抑えることに着目したのが「低インスリンダイエット」です。
低炭水化物ダイエットでは、摂食する炭水化物(糖質)の食事の量を管理していますが、低インスリンダイエットではカロリーではなく「GI値(グリセミック・インデックス)」が管理基準となります。
GI値は1981年、トロント大学のジェンキンス博士らが発表した概念です。
食べ物の血糖値の上がりやすさを指標としたもので、食品に含まれる糖質の吸収度合いを示します。
現在では1300種以上の食品にGI値が発表されており、WHO、カナダの栄養士会、国際糖尿病学会でもGIの利用を薦めています。
両ダイエット法は基本的に食事量を減らすという療法ではないので、急激なダイエットによるストレスを感じることなく進めるメリットがあります。
それぞれのダイエット法の管理法の違い
低炭水化物(ローカーボー)ダイエット
・炭水化物(糖質)の量で管理
炭水化物(糖質)を単純に減らすダイエット療法
低インスリンダイエット
・GI値(食べ物の血糖値のあがりやすさ)で管理
食品を「抜く」ではなく「選ぶ」ダイエット療法
GI値とは
GI値とは、食品の炭水化物50グラムを摂取した際の血糖値上昇の度合いを、ぶどう糖を100とした場合、それに対して他の食品を摂ったときの相対値で表した数値です。
つまり、数値が低いほど、太りにくい食品ということになります。
低インスリンダイエットでは、なるべく数値の低い低GI食品を選んでいくことが特徴です。
GI値=(対象食品摂取時の血糖値上昇曲線の面積/「ブドウ糖」摂取時の血糖値上昇曲線面積)×100
※GI値は、血糖値の時間変化をグラフに描き、その曲線が描く面積比によって算出されます。
高GI値の食品
糖質の吸収が急激で、インスリン分泌が過剰に分泌され過食を起こしやすく肥満を招きやすい。
低GI値の食品
糖質の吸収がゆるやかで、インスリン分泌が緩やかで過食を抑制し肥満になりにくい。
GI値の区分
GI値の目安として、一般的にGI値が70以上を高GI食品、56~69が中GI食品、55以下が低GI食品として分類することができます。
低インスリンダイエットでは、なるべく高GIはなるべく避けるか、量を減らす、糖質吸収量を減らすなどの工夫をしていきます。
GI値 | 食品 | |
高GI | 70以上 | 穀類:白米 白パン 餅 煎餅 粥 赤飯 バターライス 果物:果物ジャム 缶詰 野菜:じゃがいも 里いも 長いも 人参 乳製品:練乳 |
中GI | 56~69 | 穀類:玄米 コーンフレーク 果物:パイナップル 柿 ぶどう 野菜:さつまいも 乳製品:アイスクリーム |
低GI | 55以下 | 穀類:そば スパゲッティ、押し麦 春雨 果物:りんご イチゴ メロン グレープフルーツ みかん 野菜:葉物野菜 ブロッコリー ピーマン きのこ類 乳製品:牛乳 チーズ ヨーグルト バター |
低GI食選びのPoint
1.デンプン質の低い野菜を選ぶ
2.穀物は精製されていないものを選ぶ(全粒穀物)
3.食物繊維が豊富なものを選ぶ
高GIのものには主食となりやすい白米、白パン、イモ類が多いですが、デンプンが含まれているものが豊富にあることが特徴にあります。
そのため、なるべくデンプンの少ない食品を選ぶことが低GI食選びのポイントの一つとなります。
しかし、主食をなくすことは困難なので、それに代わるものとして、全粒穀物を使用したものを主食にするといいでしょう。
全粒穀物とは精製などの処理で糠(ぬか)となる果皮、種皮、胚、胚乳表層部を除去していない穀物やその製品のことをいいます。
例えば、
玄米、発芽玄米、ふすまをとっていない麦、そば、オートミール、全粒粉パン、全粒粉パスタ
などがあります。
これらは、糖質比率が抑えられるばかりか、食物繊維やミネラル、ビタミンなども豊富に含まれているので、低GIの主食としてふさわしい食品になります。
低インシュリンダイエットの効果的な食事方法
GI値が気になっていても、GI値が低い食品だけを食べることを実践するのはなかなか難しいことです。
かといって、全く炭水化物を食べないこともダメで、炭水化物が不足すると筋肉が痩せ落ちて代謝機能が低下し、リバウンドしやすい身体になってしまいます。
そこで、高GIの高い食品を食べる際にはインスリンが分泌されないよう、血糖値が急激に上昇しない食事方法を心掛けることも必要です。
そのPointとは下記のようになります。
《GI値を緩やかに上げるポイント》
1.GIを下げる食品(食物繊維お酢、乳製品、緑茶、ホエンプロテイン)を利用する
2.食べる順番を意識する
3.食後のおやつ、デザートは3時間後に
一点目は、食物繊維を含む食品と一緒に食べることで、他の食品のGI値を下げる効果が期待できます。
特に、海藻類、熟れた果物に多く含まれるみずみずしい水溶性食物繊維は、糖を包みこみ、腸に吸収させにくくする作用があるため、血糖値上昇を緩やかにする効果があります。
また、また不溶性食物繊維は飲み込む前によく噛むことが必要となり、これが満腹中枢を刺激し満腹感を高めてくれるので食事量がオーバーすることを防いでくれます。
また、お酢に含まれるクエン酸や酢酸や牛乳、ホエンプロテインなどの乳製品は糖吸収を抑えるので、血糖値上昇を緩やかにしてくれます。
また、緑茶に含まれるカテキンも血糖値を65%程度下げる効果があり有効な飲み物です。
食べる順番も炭水化物(糖類)を最初に摂ると腸に吸収されやすくなるので、食物繊維が豊富なものから食べるといいでしょう。
以上を満たす方法の例
1.朝食の場合 牛乳を飲む⇒野菜サラダにお酢をかけ食べる⇒全粒粉パンを食べる
2.夕食の場合 酢物を食べる⇒お茶を飲みながら玄米など炭水化物(糖質)を食べる
お菓子やデザートは時間を空ける
お菓子やスナック菓子を食べる場合は、時間に気をつければ問題ありません。
血糖値が上がっている食後は避けて、血糖値が空腹時まで戻っている食事3時間後くらいが良いとされています。
3時におやつをつまむというのは賢い食べ方と言えます。
気をつけたい食べ物
脂質(脂肪)は太りやすいイメージがありますが、ほとんどの脂質は太る原因にはなりません。
腸での吸収の際は、脂溶性ビタミン(ビタミンA,D,K)の吸収を助ける働きもあり重要な栄養素です。
そのため、肉食、油ものはどんどん摂ってよいという意見もみられます。
しかし、気を付けないといけないのが低炭水化物(ローカーボー)、インスリンダイエットともに、ダイエット効果のみに目がいき、脂質のもつ動脈硬化リスク等、塩分の過剰摂取などについては目が行き届いていない点があるので注意が必要です。
油脂と炭水化物(糖質)の組み合わせの食べ物
植物性の油脂には、ω3脂肪酸(DHA,EPA)、ω6脂肪酸(コーン油等)、ω9脂肪酸(オリーブオイル等)などの種類がありますが、中性脂肪や悪玉コレステロール(LDL)を下げる有効な働きがあります。
ただし、油脂は炭水化物(糖質)と一緒にとると体内に蓄積されやすくなります。
衣がたっぷりついた天ぷらやフライなどの揚げ物、小麦粉とバター、砂糖からできたケーキやクッキーなどの洋菓子、ポテトチップスなどは炭水化物(糖質)の体内への吸収を高めてしまうので注意が必要です。
野菜はすべて低GIではない
ビタミンやミネラル、食物繊維が豊富な野菜は、おなかいっぱい食べても大丈夫ですが、例外的なものがあります。
それは、にんじんとイモ類(じゃがいも、さつまいもなど)です。
にんじんはGI値は80、じゃがいもは90と高GIの部類に該当します。
芋類はでんぷんが含まれ予想がつきますが、ニンジンは糖質が比較的高い野菜なので摂りすぎないよう注意が必要です。
特に、キャロットジュースや果物ジュースは糖質が高めの傾向にあります。
長鎖飽和脂肪酸の過剰摂取 ~お肉など~
肉類に多く含まれる動物性脂肪に多い飽和脂肪酸(長鎖脂肪酸)は、糖質に比較すると体内に吸収されにくいものの、中性脂肪となったり血液中の中性脂肪やコレステロールを増加させ、血液をドロドロにしてしまう作用があります。
摂りすぎは脂質異常から発展して脳に酸素が行きわたらず脳虚血発作、高血圧、動脈硬化を引き起こ危険性があります。
また、過剰な肉の摂取は、その分解過程において発がん性物質を発生させ腸内で悪玉菌を増やしてしまうこともあり、それが老化に深く関わっているともいわれています。
トランス脂肪酸を含む食べ物 ~バター、マーガリン、スナック菓子、ファーストフード~
バターやマーガリンのGI値は30前後とかなり低めです。
一見指数だけみると、大丈夫そうにみえます。
そのため、体重は増えないため、「バターコーヒー」といったダイエットコーヒーもブームになりました。
とはいえ、バターやマーガリンには「長鎖脂肪酸」や「トランス脂肪酸」が多く含まれています。
トランス脂肪酸も長鎖飽和脂肪酸と同じように、LDL(悪玉)コレステロールを増やし、HDH(善玉)コレステロールを減らし、動脈硬化を促し心疾患の危険性を高めると考えられています。
その影響度は長鎖飽和脂肪酸の約2倍に該当するようです。
動脈硬化を引き起こすリスクのある「長鎖脂肪酸」「トランス脂肪酸」については考慮されていない点があるので、GI値だけでなく成分表も確認し注意しましょう。
極端な食事は避けることが大切
低インスリンダイエットは糖質を中心とした食品のGI値を考慮することは意味があります。
しかし、「肉をいっぱい食べてもいい」、という極端なものも見受けられますが、ダイエット効果にばかり目を向け、他の生活習慣病(動脈硬化、高血圧など)など考慮されていない面があるため、GI値のみ参考にせず、栄養のバランスを考慮しながら取り入れていくといいでしょう。
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