ビタミン類②ビタミンB群

栄養基礎

ビタミンB群とは

ビタミンB群は水溶性のビタミンで、精神面、生きるためのエネルギーをつくるためには欠かせない栄養素であることから「代謝ビタミン」とも呼ばれます。
ビタミンB群に属する栄養素としては、

ビタミンB1(チアニン)
ビタミンB2(リボフラビン)
ビタミンB3(ナイアシン)
ビタミンB5(パントテン酸)
ビタミンB6(ピリドキシン)
ビタミンB7(ビオチン ビタミンH)
ビタミンB9葉酸、プテロイルグルタミン酸
ビタミンB12(コバラミン)

などがあります。
ビタミンB群は、酵素反応の促進、神経伝達物質生成反応を高める働きがあり、お互いが助け合いながら働くため、それ故にビタミンB群は一緒に摂るのが望ましい形とされています。

ビタミンB群の働きの特徴

ビタミンB群で相互作用することで働く

食品から摂ったビタミンB群はそのままでは働けず、いったん身体の中で働ける形に変化(活性型)して働けるようになります。
このとき、働ける形になるにはビタミンB群同士でお互い助け合って働けるようになります。
例えば、葉酸(ビタミンB9)にはナイアシン、ビタミンB12が、ビタミンB6にはビタミンB2が必要で、核酸が必要な場合もあります。
そのため、ビタミンB群を摂取する場合は、単体ではなく、複合体で摂取すると同時に核酸成分も一緒に摂ると効率的です。

補酵素として働く

人の身体の中では、様々な化学反応が起ることで、エネルギーが生み出されたり、神経伝達物質が変換されたりします。
例えば、Aという物質がBという物質に変化する場合、スムーズに変化させてくれる物質がタンパク質成分の「酵素」です。
ただ、酵素単独でも働くことができず、酵素に非タンパク質性の補酵素が結合することで酵素としての役割として働きA→Bの反応が進みます。
補酵素には、ミネラルであったりビタミンなどが含まれます。
また、タンパク質部分をアポ酵素、補酵素と結合した活性化したものをホロ酵素といいます。
例えば、グルタミン酸がGABAに変換するには、酵素のGADの助けが必要ですが、GADに補酵素ビタミンB6が結合することによって、この反応がすすむことができます。

エネルギー生成に関わる

ビタミンが補酵素として働く例の一つとして、クエン酸回路があります。
食品(糖質)が体内に入ると分解されてぶどう糖ができますが、ぶどう糖は血液中を通して細胞質内に入り「解糖系」によってピルビン酸が生成され、ミトコンドリア内に入って「クエン酸回路」、「電子伝達系」を通してATP(エネルギー)がつくられます。
これらの反応を進ませるためには、多くのビタミンB群やミネラルが補酵素として働いています。

精神面に関わる

精神面にはドーパミン、ノルアドレナリン、セロトニンといった神経伝達物質の働きが関わっています。
ドーパミン、ノルアドレナリンは、タンパク質のフェニルアラニンから、セロトニンはタンパク質のトリプトファンからつくられますが、その間の反応には酵素を活性化させるためにビタミン、ミネラルが必要になります。

各種ビタミンB群の働き

ビタミンB1(チアミン)・・・エネルギー変換に関わる。疲労、精神面に影響

ビタミンB1は糖質(ぶどう糖)を細胞内でエネルギーに変換するときに関わる働きに関わっています。
糖質が体内で分解されたぶどう糖は血液中を通して細胞質内に入り「解糖系」によってピルビン酸が生成され、ミトコンドリア内に入って「クエン酸回路」、「電子伝達系」を通してATP(エネルギー)が生成されます。
これらの回路を働かせるには酵素の働きが必要ですが、ビタミンB1は酵素の働きを活性化させる補酵素として働きます。
ビタミンB1が不足すると、この回路が作動せず、代わりに疲労物質の乳酸が作られます。
結果、疲れやすくなったり、筋肉痛を起こしやすくなったりします。
また、ビタミンB1は、脳や神経の大切なエネルギー源となって中枢神経、末梢神経を正常に働かせ、集中力、記憶力向上に寄与してくれます。
炭水化物(糖質)が多く、ビタミンB1の少ない食品(白米、ジャンクフードなど)の食生活を続けていると欠乏しやすく、白米を食べるようになった明治初期やジャンクフードが流行になった昭和時代は「脚気(かっけ)」で問題となった歴史もあることで知られています。
参考URL

https://doctorsfile.jp/medication/438/

ビタミンB1が欠乏すると、イライラ、倦怠感、食欲の低下などの症状が表れ、末梢神経や中枢神経に異常が生じ、手や足の先に痛みやしびれが出るようになります。
逆に過剰に摂取しても体内では必要な分しか利用されずに尿として排泄されるので過剰症の心配はありません。

【ビタミンB1(チアミン)を多く含む食品】
●魚介類: ウナギ蒲焼、コイ、タラコ、紅鮭、アイナメ、昆布
●肉類: 豚ヒレ、豚もも、豚ロース、鶏レバー
●穀類: 生そば、玄米、胚芽精米、米ぬか
●豆類: 大豆、えんどう豆、レンズ豆、いんげん豆、落花生 他

ビタミンB2(リボフラビン)・・・新陳代謝を助け、発育に関わる

ビタミンB2は、身体を構成する細胞の新陳代謝を助け、健康な皮膚や髪、爪をつくり、成長を促します。
そのため別名「発育ビタミン」の異名をもちます。
体内に入ってきた三大栄養素(タンパク質、脂質、糖質)を分解してエネルギーに変える補酵素としての役割があり、これらの栄養素の摂取量が多いほどビタミンB2が必要になります。
また、老化や動脈硬化などを進行させ、発がん性がある過酸化脂質を分解する働きがあるため、過酸化脂質の生成を抑えるビタミンEと合わせて摂るとよリ効果的です。

ビタミンB2が欠乏すると、口の中、唇、舌、目などの粘膜部分に症状が現れてきます。
口内炎、口角炎、目が充血してゴロゴロするなどの症状、肌荒れ、髪のバサツキといった症状に見舞われます。
皮膚トラブルの多い方は不足に注意が必要です。
また、脂質の代謝とも関係が深く、ダイエット中は十分摂取しましょう。
ビタミンB2は、水溶性ビタミンなので過剰に摂取した場合は、体外に排泄されます。

【ビタミンB2(リボフラビン)を多く含む食品】
●魚介類: ウナギ蒲焼、ドジョウ、、真カレイ、サンマ、ブリ、ウニ
●肉類: 豚レバー、牛レバー、鶏レバー、鶏卵、豚肩ロース
●野菜類: アボガド、モロヘイヤ、菜の花、クレソン
●乳製品: 牛乳、ヨーグルト、アイスクリーム
●豆製品: 納豆、大豆、緑豆 他

ビタミンB3(ナイアシン、ニコチン酸)・・・広い範囲に欠かせない

ナイアシンは体内に存在するビタミンの中でも最も多く存在するビタミンで、酵素の多くは補酵素としてナイアシンを必要としています。
ナイアシン(ビタミンB3)は、糖質、タンパク質、脂質の代謝に不可欠なビタミンです。
血行改善、脳神経の働きを高めたり、皮膚を健康に保つ、コレステロール、中性脂肪を分解するといった働きがあります。
ナイアシンは必須アミノ酸のトリプトファンを原料にして肝臓で生成も可能ですが、ビタミンB1.B2,B6が不足すると十分生成できなくなります。
ナイアシンが欠乏すると、エネルギー生成が不足することでうつ状態、倦怠感を感じ、皮膚・粘膜や消化管、神経系に影響をおよぼし、食欲不振、不安感などの軽い症状が出ます。
ナイアシンには血管拡張作用があり、大量に摂ると、人によっては一過性で顔面紅潮、上半身のほてり、かゆみ症状が現れることがあります。これをホットフラッシュといいます。
さらに進むと、嘔吐や下痢、肝機能障害が生じます。
飲酒などの生活習慣で必要量が増えますので、お酒好きな方はナイアシンも摂取するといいでしょう。

【ナイアシン(ビタミンB3・ニコチン酸)を多く含む食品】
●魚介類: タラコ、カツオ、メバチ、サバ、ブリ、メカジキ、こんぶ
●肉類: 豚レバー、牛レバー、豚ロース、鶏むね
●穀類・芋: 生そば、玄米、スパゲティー、そらまめ、大豆、小麦 他

ビタミンB5(バントテン酸)・・・エネルギー生成にかかわる

パントテン酸は、ギリシャ語の「広く至る所にある」という意味から由来しており、その名のとおり、あらゆる食品に含まれているビタミンです。
炭水化物(糖質)や脂質が燃焼し、エネルギーに変換される際の補酵素として働きます。
ビタミンCの作用を助け、傷ついた皮膚、髪のダメージを助けます。
ストレスホルモンの分泌を促すことから「抗ストレスビタミン」などと呼ばれています。
極度の栄養失調や抗生物質を服用、極度なダイエットをしている場合を除いては、腸内でも合成できるため欠乏することはほとんどありません。
また、過剰摂取しても、不要なものは尿として排泄されるため過剰症の心配もありません。

【パントテン酸(ビタミンB5)を多く含む食品】
●魚介類: 子もちカレイ、ニジマス、タラコ、銀鮭、イワシ
●肉類: 鶏レバー、豚レバー、牛レバー、鶏もも、牛ヒレ、卵
●野菜類: アボカド、モロヘイヤ、干しシイタケ
●豆類: 納豆、大豆、いんげん豆 他

ビタミンB6(ピリドキシン)・・・タンパク質の代謝の中心的存在

たんぱく質の代謝にかかわるビタミンです。

ビタミンB6は、タンパク質代謝に深く関わるビタミンです。
食物に含まれるタンパク質(いくつかのアミノ酸が繋がったもの)は、一度アミノ酸に分解されて、再度体内でタンパク質に再合成されますが、このとき不可欠になるのがビタミンB6です。
そのため、タンパク質の摂取量が多くなるほどビタミンB6の量も多く必要になり、ビタミンB6をしっかり摂ることで皮膚、髪が丈夫になります。
また、アドレナリン、ドーパミン、セロトニンなど神経伝達物質の生成ともかかわっています。
ビタミンB6は、皮膚や粘膜の健康と深くかかわっており、不足すると目や鼻、耳などに脂漏性湿疹ができたり、□内炎や結膜炎にかかりやすくなります。
過剰に摂った分は、その日のうちに排泄されます。

【ビタミンB6(ピリドキシン)を多く含む食品】
●魚介類: サンマ、カツオ、メジマグロ、真アジ、ブリ、ヒラメ
●肉類: 牛レバー、牛ヒレ、鶏レバー、牛もも、鶏ささみ
●野菜類: 赤ピーマン、黄ピーマン、さつまいも、じゃばいも、ニンニク
●果実類: バナナ、夏みかん、柿、くるみ 他

ビタミンB7(ビタミンH、ビオチン)・・・皮膚、毛髪成長に関わる

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ビオチンは、皮膚炎、脱毛を防ぐ物質として発見され、ドイツ語で皮膚(Haul)の頭文字をとってビタミンHと名付けられました。
糖質代謝に関わり、皮膚、爪、毛髪の成長に関わる他、筋肉痛を緩和する働きがあります。
また、脂肪酸やブドウ糖、アミノ酸代謝に関わる酵素を補助する働きを持ちタンパク質、RNA合成にも間接的に関与します。
様々な食品に含まれており、腸内細菌によって合成されるため不足することはありませんが、抗生物質の長期服用によって欠乏症を起こす可能性もあります。

【ビオチン(ビタミンH)を多く含む食品】
●魚介類:真イワシ、鮭
●肉類:鶏レバー、牛レバー、鶏卵、鶏肉、ベーコン
●穀類:オートミール、小麦
●豆類:落花生、大豆、えんどう豆、いんげん豆 他

ビタミンB9,葉酸(ビタミンM,プテロイルグルタミン酸)・・・造血、DNAに関わる

葉酸は、ビタミンB12とともに補酵素として赤血球を作り出す働きがあります。
また、タンパク質の合成にも関与し、細胞の新生に必要な核酸(DNA,RNA)を作る時においても活躍します。
そのため、胎児が発育する妊娠中や乳児を育てる授乳中には、必要不可欠です。
また、ノルアドレナリン、ドーパミン、セロトニン生成時にも使用され、BDNFの生成にも関わっています。
通常の食事をしている限り、不足することはありませんが、妊娠中、お酒をよく飲む人は不足がちになります。

【葉酸(プテロイルグルタミン酸)を多く含む食品】
●野菜類:菜の花、モロヘイヤ、芽キャベツ、ほうれん草、ブロッコリー
●果実類:アボカド、いちご、すもも、柿
●豆類:いんげん豆、枝豆、落花生 他

ビタミンB12(コバラミン)・・・造血に関わる

ビタミンB12は、葉酸と協力して骨髄で造血を促し、貧血予防に関わるビタミンです。
このことから「赤いビタミン」とも呼ばれます。
また、肝臓を再生するためのタンパク質、核酸の生成、脂肪の代謝、中枢神経の機能維持に働いています。
使用される量は少ない上に、体内でも合成されるので極端な飲酒、ダイエット、偏食をしないかぎり不足することはありません。
植物中にビタミンB12は含まれないため、ベジタリアンダイエットをする場合は貧血になりがちになるので注意が必要です。
ビタミンB12が不足すると、貧血を起こすほか、神経組織の代謝に悪影響を及ぼしたり、肝臓の再生もできずに弱ってしまいます。
なお、過剰摂取しても尿と一緒に排泄されるので過剰症の心配はありません。

【ビタミンB12(コバラミン)を多く含む食品】
●魚介類: シジミ、赤貝、サンマ、牡蠣、タラ、海老、アサリ、シジミ
●肉類: 内臓類、牛レバー、鶏卵 他
●乳製品: チーズ 他

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