トラウマ、感情と関わる神経伝達物質 ~精神状態のバランス・覚醒、うつ病に関わるセロトニン~

神経伝達物質

セロトニンとは

セロトニン(別名5HT)は、うつ病の認知の広がりにより良く知られた神経伝達物質の一つではないでしょうか?
セロトニンはノルアドレナリン、ドーパミンの分泌量のバランスをとる働きがあることで知られています。
また、起床時の覚醒作用として利用され、夜になると松果体でメラトニンに変換され睡眠を促します。
セロトニンが不足すると、鬱的症状を引き起すためセロトニンを高めることにメリットがおかれがちですが、抗うつ薬、ハーブのセント・ジョーンズ・ワートの過剰摂取になると、精神が不安定になりセロトニン症候群といった交感神経が高まった状態になるので注意が必要です。

※うつ病はセロトニンの減少で起こると言われていますが、実際はトラウマ(PTSD/解離性障害)によって神経系統の働きが低下して起こっているだけです。そのためうつ病になってセロトニンを増やすだけではうつ病は治りません。

セロトニンのもたらす効果

適度なセロトニン分泌量

・精神のバランスが保たれる。
・朝の目覚めがよくなる。
・青空をみたり運動後はすっきり爽快な気分に。

不足したセロトニン分泌量

・無気力感、落ち込む
・慢性疲労、眠気
・鬱的症状

過剰なセロトニン分泌量

・セロトニン症候群的症状(交感神経高まった状態)
・イライラ感、興奮、不安が強くなる
・手が震える、発汗

セロトニンの出来方 ~必須アミノ酸トリプトファンからつくられる~


セロトニンは必須アミノ酸のトリプトファンから5-HTP(5ヒドロキシトリプトファン)を経て形成され、脳の覚醒、体温調整、生体リズムに関わります
L-トリプトファンは、肉、魚類、豆類に多く含まれる必須アミノ酸で、体内で作り出すことはできないため摂取する必要があります。(ただし、過剰摂取はセロトニン症候群を引き起す可能性もあります。)

セロトニンの作られる場所 

体内のセロトニンの90%が小腸など消化管粘膜にあり、脳内の中枢神経には2%存在します。
一般的によく語られる脳内で働くセロトニン(脳内セロトニン)は、脳内に入ってきたトリプトファンを原料にして脳幹にある「縫線核(ほうせんかく)」で合成されます。
そこから大脳皮質、大脳辺縁系、視床下部、脳幹など広汎な脳領域に投射し様々な作用をもたらします。
一方、腸内で生成されたセロトニンは、血中を通して脳関門を通過できないため脳内の神経細胞に直接作用することはありません。

また、脳内セロトニンは、大脳を覚醒させて、集中力を高めたり、気分をすっきりさせるリラックス効果があります。
夜になり光の量が減少してくると、セロトニンは松果体でメラトニンに変化され睡眠が促されます。
睡眠中はメラトニンが分泌された状態でセロトニンは働きませんが、朝になり光を感知するとセロトニン神経が働き、メラトニンがセロトニンに変換されて覚醒作用として働きます。

セロトニンと精神障害の関係 ~定型うつ病(メランコリア)~

うつ病はセロトニンが低下した状態で引き起されるとはよく言われますが、これは1950年頃に提唱されたモノアミン仮説という仮説(実証されたデータに基づいたものではない推論)に従った考え方です。
当時は、主にはメランコリア型(定型うつ)に対して考えられたもので、後の非定型うつ病(ディスチミアタイプ)、新型うつ病はこれに該当しません。
定型うつ病に対しては、セロトニン、ノルアドレナリンの分泌を高める抗うつ薬が処方されます。
そのため、定型うつに対しては、効果が効きやすく症状の改善が見られます。(ただし、痛み止め的なもので症状を麻痺させているだけなので本来の治療にはなっていません(対症療法))
現実的に、定型うつは、トラウマチックな出来事で副交感神経(背側迷走神経)の作動により引き起されるもので、ノルアドレナリンが減少し逃走や闘争することを諦めたような状態であるので、他罰的であったり自己主張するようなことはめったにありません。

うつ病でもない人、非定型うつ、新型うつタイプ、パニック障害に抗うつ薬を処方すると、セロトニンが過剰になるためセロトニン症候群を引き起し症状を悪化させる可能性もあります。
そのため、これらの症状に対しては興奮性のノルアドレナリンを低下させる、抗不安薬(ベンゾジアゼピン系)が処方されています。

定型タイプと非定型タイプは全く症状は異なるものであるのに対し、総称して「うつ病」と扱われ、さらに新型うつ、コロナ鬱などうつ病に対する拡大解釈のために、本来のうつ病がどのようなものか不明瞭にされつつあります。 

セロトニン症候群とは

「興奮する」、「動き回る」「手足が勝手に動く」、「眼が勝手に動く」、「震える」、「体が固くなる」、「汗をかく」、「発熱」、「下痢」、「脈が速くなる」

参考:セロトニン症候群

セロトニンを増やす方法

トリプトファンで増やす

セロトニンは体内では作られないため、生成するにはたんぱく性食品に含まれるトリプトファンか、サプリメントとして販売されている「5-HTP」を利用して摂取する必要があります。
ただし、5-HTPサプリメントでは血管脳関門を通過して副作用を引き起こすため、食事から摂取するほうが望ましいようです。
また、トリプトファンからセロトニンの生成までには、葉酸、鉄分、ナイアシンも不足しないようタンパク質だけに偏らないよう摂取することが大切です。

呼吸法を利用する

脳内の酸素量が欠乏することで、縫線核からセロトニンの分泌が促されることが知られています。
そのため、吐くことに主体を置いた呼吸を利用することで分泌を促すことが可能です。

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