トラウマ・精神状態に影響する神経伝達物質の特徴(10選)

はじめに

私達の嬉しい、悲しい、楽しい、憂鬱といった感じる気持ちは、脳でコントロールされています。
脳にはたくさんの神経細胞(ニューロン)がお互い手を結ぶようにネットワークを形成していますが、神経細胞内にある神経伝達物質を介して細胞同士間で情報伝達が行われることで感情、意識が形成されています。
神経伝達物質が適切な量分泌されることで、やる気がでたり、安心して眠ることができたりと心の健康が保たれます。

神経伝達物質の分類

神経伝達物質は、神経細胞が作りだす化学物質です。
その種類は100種類以上にのぼり、脳内の部位によって使われる神経伝達物質の種類が異なってきます。
神経伝達物質は、大きく分類すると小さな有機分子である「小分子伝達物質」とアミノ酸が連なった「神経ペプチド伝達物質」に分けられます。
これらの神経伝達物質は、神経細胞の「シナプス小胞」に詰め込まれています。
神経ペプチド伝達物質は電子顕微鏡でみると黒っぽくみえることから、「有芯小胞」と呼ばれています。
神経ペプチド伝達物質として、β-エンドルフィン、オキシトシンがよく知られています。

興奮系と抑制系

性質的な面としてみると、神経細胞を興奮させるものと、抑性させるものに分けられます。
興奮系としてよく知られているのが、グルタミン酸、ノルアドレナリン、ドーパミンなどで、多くは交感神経を高め覚醒、学習能力、興奮、不安に関わります。
抑制系には、GABA,グリシンなどがあり、副交感神経を高め、睡眠、リラックス状態に関わります。
興奮系と抑制系の相反する作用によってバランスが保たれ、脳が健全に機能しているのです。

モノアミン類

構造的には
「アミノ酸」
「ペプチド類」
「モノアミン類」
に分類されます。

特に、モノアミン類は精神障害に関わる「モノアミン仮説」としてよく知られています。
よく耳にする
「うつ病はセロトニンの減少で起こる」
「統合失調症はドーパミンが過剰になって起こる」
というものが「モノアミン仮説」です。
(本来のうつ病はPTSDの症状で結果的にセロトニンの減少が起こっているものと考えられます。)
モノアミン類は、一つのアミノ基(NH2)が2つの炭素鎖により芳香環に繋がった化学構造をもっているのが特徴で、セロトニン、ドーパミン、ノルアドレナリン、ヒスタミンなどが含まれます。
中でも、トラウマ、精神疾患のコントロールに関わる神経伝達物質を分類すると下記のようになります。

モノアミンの種類(wikiより)

小分子伝達物質

アセチルコリン(コリンの酢酸エステル化合物
★ドーパミン(モノアミン)
★ノルアドレナリン
(モノアミン)
★ヒスタミン(モノアミン)
グルタミン酸
(アミノ酸)
GABA(アミノ酸)
グリシン(アミノ酸)
★セロトニン(モノアミン)

神経ペプチド伝達物質

βーエンドルフィン
オキシトシン

★モノアミン系
赤:興奮系 青:抑制系

小分子伝達物質の特徴

アセチルコリン・・・リラックス(副交感神経)、ひらめき、クリエイティブに関わる

大脳新皮質、大脳基底核に存在し、副交感神経系や運動神経の末端から放出される神経伝達物質で、ノルアドレナリンを抑制し副交感神経を高める働きがあります。
筋肉を収縮、興奮させたり、記憶や認知などを司る脳の海馬の働き、血圧、脈拍、睡眠などにも関与しています。
また、増加するとクリエイティブさ、閃きとも関わっていることも明らかに。

脳内での生成反応
コリン+アセチルCoA⇒アセチルコリン
必須アミノ酸コリンを摂取することで増やすことができる。(レシチンにコリンが多く含まれる)

ドーパミン・・・快、意欲、学習、運動に関わる。

大脳基底核、黒質や被蓋でつくられ、運動、ホルモン調整、感情の豊かさ、意欲、学習などに関わります。
報酬系回路(A10)が刺激されることでドーパミンが分泌されます。

脳内での生成反応
フェニルアラニン⇒チロシン⇒L-dopa⇒ドーパミン⇒ノルアドレナリン

ドーパミンは体内で生成できないため、フェニルアラニン(必須アミノ酸)、チロシン(非必須アミノ酸)を含む食品から摂る必要がある。

・フェニルアラニンが多く含まれる食品
 牛レバー、マグロ、鶏むね肉
・チロシンが多く含まれる食品
 クロマグロ、豚レバー、高野豆腐
・ドーパミン生成に必要なミネラル
 葉酸、Fe,ナイアシン、ビタミンB6

精神疾患との関わり
・統合失調症ではおもにドーパミンを抑制する抗精神薬が用いられます。
・解離性障害では不足傾向

ノルアドレナリン・・・意欲、向上心、抗うつ作用

ノルアドレナリンは、脳幹の青斑核においてドーパミンからつくられる神経伝達物質で、交感神経を高める働きが強い作用があります。
覚醒力が強く、闘争あるいは逃避反応を生じさせて、心拍数を直接増加させるように交感神経系を動かし、脂肪からエネルギーを放出し、筋肉の素早さを増加させます。

脳内での生成反応
フェニルアラニン⇒チロシン⇒L-dopa⇒ドーパミン⇒ノルアドレナリン
ドーパミンからノルアドレナリンへの変換にはビタミンC,Cuが必要

・フェニルアラニンが多く含まれる食品
 牛レバー、マグロ、鶏むね肉
・チロシンが多く含まれる食品
 クロマグロ、豚レバー、高野豆腐
・ドーパミン生成に必要なミネラル
 葉酸、Fe,ナイアシン、ビタミンB6

適量だと困難に立ち向かう源となりますが、過剰に分泌されると、不安、緊張が高まり、パニック障害、不安障害、非定型うつ病、不眠症を引き起します。

ヒスタミン・・・覚醒作用、ワーキングメモリ、過食を防ぐ、食中毒アレルギー

神経組織では神経伝達物質として働き、音や光などの外部刺激および情動、空腹、体温上昇といった内部刺激などによっても放出が促進され、オキシトシン分泌や覚醒状態の維持、食行動の抑制、記憶学習能の修飾などの生理機能を促進することで知られています。
過食を防ぎ、頭の回転に関わるとされるのでダイエット、認知機能を高めたい場合に意識して摂るとよいでしょう。

ヒスチジン(必須アミノ酸)⇒ヒスタミン
・ヒスチジンはカツオ、マグロなど赤身魚に多く含まれる。

・向精神薬の過食は抗ヒスタミン作用によるものと考えられている。
・ストレスによりヒスタミン分泌低下することで過食を招きやすい。

グルタミン酸・・・脳を解毒し学習能力をUP!

グルタミン酸は脳内で毒性となるアンモニアの解毒とそれを排出する利尿作用、脳を活性化し、学習や記憶能力を高める働きがあります。
しかし、増えすぎると毒性として働き、細胞死やパーキンソン病の発症に関わってきます。近年では、グルタミン酸の過剰が強迫性障害や統合失調症(グルタミン仮説)と深い関わりがあることが指摘されています。
脱炭素化により、リラックス成分であるGABA(ギャバ)に変換されます。

脳内での生成反応
グルタミン⇒グルタミン酸⇒GABA
・グルタミンからグルタミン酸への変換にはナイアシン必要
・グルタミン酸が不足することはほとんど心配しなくてよい。

・強迫性障害、統合失調症者はグルタミン酸が過剰傾向。

GABA(γーアミノ酢酸)・・・リラックス、睡眠効果を高める

GABA(γ-アミノ酪酸)はグルタミン酸から生成されて脳内の抑制性神経伝達物質としてはたらき、不安状態や興奮を和らげる精神安定作用があります。そのため、睡眠薬や抗不安薬はGABAを制御する薬として使われます。
また、交感神経からのノルアドレナリン放出を抑えることにより、血圧低下作用も報告されています。
ココアに多く含まれます。

脳内での生成反応
グルタミン⇒グルタミン酸⇒GABA
・グルタミン酸からGABAへの変換にはビタミンB6が必要。そのためGABAが不足ぎみな場合はビタミンB6を多く含むものを摂取するとよい。
カツオ、マグロ、サンマなど魚類、
・体外から摂取したGABAは脳内に入らず神経伝達物質として作用しない。

・抗不安薬、睡眠薬(ベンゾジアゼピン系)、アルコールの作用する神経伝達物質。
・不安の強い、不眠症、全般性不安障害(GAD)、社交不安障害(SAD)、パニック障害、非定型うつ病ではGABAが不足傾向にあります。

グリシン・・・眠りの質を高める効果、美肌、アンチエイジング効果

グリシンとは、アミノ酸の一つで、アミノ酸の中では最も単純な分子構造をもちます。
中枢神経系では、GABAに次いで抑制系神経伝達物質として重要な地位を占めます。
ほのかな甘みと、菌を抑える静菌作用の性質を生かし、調味料、保存料としてコンビニ弁当など加工食品に用いられています。
体内ではコラーゲンに多く含まれており、美肌、関節痛、アンチエイジング、睡眠に関わります。
体内温度を下げ、睡眠の質を高める効果があります。

・主に体内のグリシンを増やすことにメリットが多い。
・体内グリシンを増やすにはエビ、ホタテ、イカ、蟹、カジキマグロ、牛スジなどの魚介類、類鶏軟骨、豚足

セロトニン・・・精神のバランス、覚醒、うつ病に関わる

中脳と延髄の間にある縫線核を源として、その神経線維は脳幹部や大脳皮質とつながっています。
セロトニンは大脳を覚醒させ、集中力を高め、気分をすっきりさせるリラックス効果があります。
また、大脳辺縁系に直接神経線維を送り、不安・恐怖といった情動のコントロールに参加しています。
すなわち、セロトニンを放出させる物質は不安をかきたて、放出を抑制する物質は抗不安薬として作用します。

トリプトファン(必須アミノ酸)⇒5-HTP⇒セロトニン⇒メラトニン
・セロトニン生成にはトリプトファンが必要
・トリプトファンを含む食品
肉、魚類、豆類に多く含まれる
・セロトニン生成に必要なミネラル葉酸、Fe,ナイアシン、ビタミンB6

・セロトニンが減少すると鬱的症状を引き起こすとされています。(モノアミン仮説)
・うつ病でもない人、非定型うつ、新型うつタイプ、パニック障害に抗うつ薬、セント・ジョーンズワートを処方すると、セロトニンが過剰になるためセロトニン症候群を引き起し症状を悪化させる可能性もあります。

神経ペプチド伝達物質の特徴

βーエンドルフィン

視床下部弓状核のニューロンがエンドルフィンを分泌し、、下垂体前葉からとβエンドルフィンが放出されます。
食欲、睡眠欲、生存欲、本能などが満足すると分泌されます。
また、麻薬のモルヒネの作用を示すことから、脳内麻薬とも言われ、長距離走などで起こる高揚感「ランナーズハイ」はエンドルフィンの作用とも考えられています。

オキシトシン

視床下部の室傍核で生成され、脳下垂体後葉から分泌されます。
異性との接触や、スキンシップなど人と交流することで分泌されることから「絆ホルモン」「愛情ホルモン」とも呼ばれます。
また、幸せな気分を高めるセロトニンや、やる気が出るドーパミンなどのホルモンの分泌を促します。
自閉症スペクトラム(ASD)では少なく、自己愛が強くなるほど多く分泌される傾向にあるようです。

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