トラウマ、感情と関わる神経伝達物質 ~快楽、学習に関わるドーパミン~

神経伝達物質

ドーパミン

人が快く楽しいと感じることは、生きていく上でとても大切なこと。
楽しく感じられてこそ、生きていこうとする原動力が湧いてくるものです。

脳が「楽しい」とポジティブに感じるのは、脳内の神経伝達物質「ドーパミン」の流れが深く関わっています。
神経伝達物質とは、神経細胞と神経細胞のシナプス間隙において、情報伝達の役割を果たす化学物質。
ドーパミンは百種類以上ある神経伝達物質のうちの一つになります。
アドレナリン、ノルアドレナリンの前駆体でもあり、運動調節、ホルモン調節、快の感情、意欲、学習などに関わわる役割があることが知られています。

うつ病などの精神疾患にかかると、何をやっても無感動になってしまいますが、それもドーパミンの流れが停滞してしまうことによって引き起こされていることが一つの要因と考えられます。
本記事では、精神疾患とも深い関わりのある重要な神経伝達物質の一つ「ドーパミン」についてまとめています。

ドーパミンのもたらす効果

ドーパミンは一般的には「快」的な意味合いで使用されることが多いですが、その分泌量によって感情の働き方が異なっています。

適度なドーパミン分泌量

何かに感動する、ゲームをして楽しい、お酒を飲んでほろ酔い気分で愉快になるときは適度にドーパミンが分泌されている状態です。
長期記憶には欠かせない物質で、ドーパミンの適度な分泌は学習能力にも関わってきます。

・楽しい気分になったり、愉快になる、幸せ感。
・意欲を高める。
・集中力、記憶力が高まり学習能力が向上する。
・感情豊かになる。

不足したドーパミン分泌量

うつ病になる場合や、解離性障害が強くなると失感状態、無気力感が強くなってきます。
また抗不安薬、睡眠薬といったベンゾジアゼピン系(抑制系)の薬を長期服薬しても感情の低下が起こりうつ病のような状態になってきます。

・楽しいと感じない、ネガティブになる。
・無趣味、物事に取り組む意欲が低下
・集中力、記憶力が低下し学習能力が低下する。
・無感動

過剰なドーパミン分泌量

分泌が過剰になると、好ましいようにも思われますがネット、スマホ、買い物、ギャンブル、アルコールへの依存性、衝動買い傾向になります。
また、過食、幻覚や幻聴、チック症、トゥレット症候群といった神経症的症状、躁状態や統合失調症的な精神疾患的症状がでて不安定状態を引き起します。

・依存性が強くなる。(共依存、スマホ、ギャンブル依存など)
・衝動買い、
・躁、統合失調症的な症状
・攻撃的、いらいら、キレやすくなる(ノルアドレナリンも分泌されているため)

ドーパミンの出来方 ~タンパク質構成アミノ酸からつくられる~

ドーパミンは、フェニルアラニンやチロシンといった化学物質から作られ、ノルアドレナリンやアドレナリンを作る元となる神経伝達物質です.
フェニルアラニン、チロシンは、牛乳、肉類、卵といったタンパク質に多く含まれるタンパク質構成アミノ酸。
体内では作り出すことができないため、外から摂取する必要がある必須アミノ酸の一つです。
体内では変換されてドーパミンの元となるLドーパとなり、脳関門を通過して脳内へと入っていきます。
生き甲斐を感じていくためには、しっかりと栄養分も摂ってドーパミンを分泌させていくことが必要ということになります。

ドーパミンの作られる場所 ~4つの神経回路と報酬系回路~

ドーパミンは、脳内部の大脳基底核にある黒質や被蓋と呼ばれる場所で生成され、ドーパミン系神経回路を通して脳内を巡回します。
ドーパミン神経回路には、「中脳辺縁系」、「中脳皮質系」、「黒質ー線状体系」、「下垂体漏斗形」といった4つの系等が存在します。
また、「腹側被蓋野ー視床下部ー扁桃体ー海馬ー側坐核」を結び付ける報酬系回路(A10神経回路)とも深く関わっており、受け取った刺激から「快/不快」の判断を下す扁桃体が「快」と判断した時、側坐核が刺激されドーパミンが分泌されます。

ドーパミンと精神障害の関係  ~解離性障害、うつ病、統合失調症~

うつ病や解離を強くうけた人は、この報酬系神経回路が不活発になると言われています。
この状態に陥ると、扁桃体が「快」の刺激を受け取っても側坐核の活動が低下しているため、ドーパミンの分泌が促されれず、嬉しいこと、楽しいことがあっても「楽しい」と感じにくくなります。
親からの過干渉や強いストレス環境下に育つと、青年期から感じる人が多くなる
「世界が色褪せて見える、現実感があまり感じられない」
といった状態は解離性障害の症状によって引き起こされるものですが、この症状もドーパミン分泌の低下と関わっていることが脳科学的に明らかにされてきています。

世界が色褪せて見えるのは脳のせい―離人感・現実感消失症の病態解明への第一歩― | 国立研究開発法人日本医療研究開発機構

統合失調症やパーキンソン病もドーパミンと深い関わりがあることで知られています。
統合失調症は、「幻覚・幻聴」を示す陽性反応、「感情、意欲低下」を示す陰性反応が見られるのが特徴です。
陽性反応(幻覚、幻聴)は、大脳基底核、中脳辺縁系神経系統のドーパミンの過剰分泌が原因と考えられています。
これを「モノアミン仮説あるいはドーパミン仮説」といい、統合失調症や双極性障害の躁状態で利用される抗精神薬による投薬治療は、このドーパミンを抑える作用があります。
一方で、陰性反応(無表情、意欲が湧かない、感情停止)には効果がないため仮説域からでていません。
統合失調症の薬は、中脳辺縁系の神経系統のドーパミン分泌反応を抑えるものですが、他の関係のないドーパミン神経系統にも作用するため、手が震えたり、ろれつが回らない、足を動かしていないと落ち着かないといった副作用が生じてきます。(アカシジア、ジスキネジア、パーキンソン症候群など)

ドーパミン神経系統

中脳辺縁系 →ドーパミン過剰で幻覚・妄想など陽性症状
中脳皮質系→陽性症状・陰性症状
黒質-線条体系→パーキンソン病はここのドーパミン量が減少することで起こる。抗精神薬でこの部分のドーパミンを抑制されることで錐体外路症状(手足が震える、目が上を向く、舌がでたままになる、じっとしていられない等運動障害)が起こる
下垂体漏斗系→プロラクチンなどのホルモンバランスの調整。特に女性に関わる

ドーパミンを増やす方法

1.チャレンジ精神、趣味、好奇心をもつこと

ドーパミンが分泌されるときは、扁桃体が「快」と感じるとき。
つまり、楽しいことや心地よいことをすることです。
そのため、趣味や好奇心を持ち続けることが報酬系回路を刺激しドーパミン分泌にも繋がっていきます。

2.ドーパミン生成に必要な栄養素を摂る。

ドーパミンの生成には、生成源となる栄養素フェニルアラニン、チロシンが不可欠です。
フェニルアラニン、チロシンはタンパク質に多く含まれます。
肉類(牛肉、豚肉、鶏肉)、豆類(大豆、豆腐、納豆)、卵、乳製品(牛乳、ヨーグルト、チーズ)、アボカド、バナナ、チョコレートなどがあります。
特に大豆はチロシンを多く含んでいるため「ブレイン・フーズ」とも呼ばれ、脳を活性化させる効果があります。
納豆は、納豆菌と食物繊維のシンバイオティクス効果もあるので、納豆と卵の組み合わせでご飯を食べるとBDNFUPでさらに効果的です。

3.好きな音楽を聴きながら瞑想、催眠を行う。

瞑想、催眠を行うと、α波、γ波といったリラックスに関わる脳波状態となります。
深い潜在意識状態(催眠状態)はγ波が出る状態ですが、深い潜在意識状態になるほどドーパミン分泌量が増えていくといった研究結果もあります。
また、好きな音楽を聴いてもドーパミンを分泌させる効果があるという研究報告もあります。(2009年マギル大学)
つまり、好きな音楽を聴きながら瞑想や催眠を行うことで高いドーパミン分泌が促され、学習、作業効率も高まることに繋がります。
(※しかし、好きでない音楽を聴いてもドーパミンは分泌されません。)

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